第8章 【第七訓】原作第十九訓と第二十訓の間の話
「誰が……ばっちそうな頭だ……!」
銀時は自力で定春の口を開けにかかった。
その様を見て、○○の悪知恵が働いた。
「定春、伏せ」
「ワン!」
「ぐおお!」
定春が床に腹をつけたことで、銀時の体は床に叩きつけられた。
「そのまま力を込めて口閉じてェ」
○○に言われるままに定春は実行する。
「何てことしてるんですか! ○○さん!」
さすがに新八も黙って見てはいられない。
しかし近づくことはない。
「はーい、緩めてー」
リズミカルに、指揮棒のように滑らかな言葉遣い。
「はーい、銀さーん、聞こえてますかァ?」
「てめー、殺す気か!」
「殺す気はないよー。ただ一つ、銀さんが言うことを聞いてくれたら、すぐに自由の身にしてあげるよォ」
頭を銜えられたままの状態で、銀時は右手をジタバタさせている。
「今日から私をここに居候させなさい」
「な……! ふざけたこと言」
「定春、今度はもっと歯を立てて噛みついてみようかー」
「待て! 待てって! わかった! わかったから定春大人しくさせて! お願い、○○ちゃん! いや、○○様!」
「その言葉に嘘はないな!」
「ないない! 神に誓ってない!」
「よーし、じゃあ、離してあげようか、定春」
その頭にポンと手を乗せ、優しく撫でた。
「ぐおお!」
「銀さん!」
ようやく吐き出された銀時は、顔面蒼白に血が施されたグラデーションで這い出て来た。
「ワン!」
○○は定春の喉元に手をやり、優しく撫でている。