第60章 【第五十九訓】チンピラ娘とかぶき町四天王の話
窓から見える大きなビル群には、明かりが煌々と灯っている。
以前と変わらない人々の営み。住民の暮らしは、騒動の前と変わらない。
みんなで護った、かぶき町の風景。
「○○? なんでまだ残ってんだ」
振り返ると、銀時が苦々し気な顔で立っていた。
「お登勢さんの顔を見に寄ったら、黒駒と会って」
現在、大江戸病院にはお登勢と次郎長も入院している。二人は同部屋。
話していたら日が沈んでしまい、帰れなくなった○○は銀時の病室へと引き返した。
「黒駒だ?」
銀時はあからさまな不快感を露にする。
「まァた押しかけ女房みたいなことする約束して来たんじゃねーだろうな」
「するわけないでしょ」
黒駒勝男とやり合うのは、今回で三度目だ。
最初はホストクラブ『高天原』で。二度目は勝男の飼い犬・メルちゃんに定春が一目惚れをしたことがきっかけ。
二匹を巡って闘争となった際、しつこさはシンクの油汚れ並みと豪語する勝男に対し、そんなものは簡単に落とせると○○は得意顔。
じゃあ掃除しに来てくれ、行くーというおかしな流れになったところ、そんなことは許さないと銀時が割り込んだ経緯がある。
「ったく。行くぞ」
「え?」
「送ってくっつってんだよ」
銀時は後頭部を掻いた。