第60章 【第五十九訓】チンピラ娘とかぶき町四天王の話
眠るお登勢の横で、銀時は静かに座っていた。
「……アイツらと行ったんじゃなかったのか」
○○は病室へと足を踏み入れた。
銀時の横へ立ち、お登勢の顔を見つめる。
依然として、目を覚まさない。
「どこにも行けないよ。銀さんがいてくれないと」
昼間、花束を携えて現れた巨漢の男――かぶき町四天王の一人、西郷特盛は知らせた。
明後日、四天王勢力は『スナックお登勢』と『万事屋銀ちゃん』を打ち壊しに行くという。
取り決めにより、私闘を仕掛けたお登勢を潰さなければならないと。
「今夜は満月だよ」
店はたたむ、かぶき町を出て行くと、銀時は西郷に告げた。
新八や神楽にも好き勝手やれと伝えた。もう、何も護れる気がしない、と。
「なら、朝になったら出て行け」
「街を出て行くなら、銀さんと一緒に出て行く」
「言っただろ。俺ァもう……」
「護ってほしいなんて、思ってない」
そばにいるだけでいい。
「もしも……」
本当は、街を出る気がないのなら……
銀時へと向けた視界が、突然途絶えた。
○○は意識を失った。
「悪ィな」
銀時は自身に凭れた○○の体を支える。
○○を巻き込むわけにはいかない。
○○も、新八も神楽も、キャサリンもたまも。
死地に赴くのは、自分一人で充分だった。