第60章 【第五十九訓】チンピラ娘とかぶき町四天王の話
キャサリンはガラスに張り付いている。
体の心配をするたまの声も聞こえていないように、へばりついている。
二日間、キャサリンはその状態のままだった。
「神楽ちゃんも、少し休んだら」
「新八君もだよ」
新八は目の下にクマを作っている。
「二人とも三日間、まともに休んでないでしょ」
銀時と平子を捜した日から、二人は休息をとっていない。
○○はその間、一睡している。いつから眠っていたのか、どうして眠っていたのかは、未だわからないが。
「寝て起きた時……もしバーさんがもう……」
神楽は手に力を込めた。
○○はキャサリンの後ろ姿に目を向けた。静止画でも見ているように、微動だにしていない。
彼女の見つめる先では、お登勢が生死の境を彷徨っている。
新八とぶつかった血を流した男は黒駒勝男だった。
その横を、銀時が走り去った。
○○は銀時を追ったが、追いつけなかった。
ただ、『スナックお登勢』の前で一枚の紙きれを拾った。
それは、銀時に宛てたお登勢の手紙だった。
「大丈夫だよ……きっと大丈夫」
お登勢の勢力である銀時が、次郎長一家の若頭・黒駒勝男を殺害した。
その報復として、お登勢は次郎長の手にかかった。
この街の人々の間では、それが真実とされている。