第60章 【第五十九訓】チンピラ娘とかぶき町四天王の話
「どうしたんですか、○○さん」
食事処へと向かいながら、静かな○○に新八が話しかけた。
「あ、わかった。銀さんとピラ子さんが一晩一緒にいたこと気にしてるんでしょう」
新八の冗談に、○○は乗って来なかった。
「○○さん」
語気を強めると、ようやく視線が新八に向いた。
その表情は冴えない。
「大丈夫ですよ、銀さんなら」
銀時のことで○○が取り乱すことは多い。
連絡が来たとはいえ、顔を見るまでは安心できないのだろうと思った新八は口にする。
昨夜、○○が気を失って運び込まれたことを、新八と神楽は知らない。
無用な心配はかけまいと、お登勢は黙っていた。
「あ、私もお登勢さんと待てばよかった」
銀時と平子が戻ったら連れて行くといい、お登勢は一人、店に残った。
「……○○さん?」
確かに、いつもの○○ならば、銀時を待っていただろう。
今日の○○はどこかおかしい。おかしいといえば、もう一人。
「お登勢さん……変じゃありませんでした?」
何がと言われたらわからない。けれど、どこか違和感を覚えた。
神楽やキャサリンは思い当たることはなかったが、○○には節があった。
「変、だったかも」
外で寝てしまったのではという○○の言葉に、何も返さなかった。
今思うと、妙だ。
「あっ、すいません」
向かいから来た男にぶつかり、新八は謝った。
○○は目を見張る。ぶつかったまま新八に凭れた男は、胴から大量の血を流していた。