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~月夜の紅~ 銀魂原作沿い小説

第59章 【第五十八訓】自称・雨女とか言うけど天気操る能力持ってない話


 初戦の代表は神楽と式神、新八のコンビ。
 二人三脚でパン――デモニウム食い競争が行われた。
 巳厘野の式神、夜叉丸に先にパンを食われた神楽は、式神の腹を執拗に攻撃。食べたものを吐き出させた。

「うぐ……」

 ○○は銀時の狩衣に顔を埋め、鼻と目を塞ぐ。

「一戦目、引き分け!!」

 原型を留めない汚物が散乱し、悪臭も漂う悲惨な結末となった。

「気持ち悪くなっちゃったじゃねーか!!」

 銀時は片手で鼻を塞ぎ、片手で神楽の頭を叩いた。

「○○、少し表出てろ」

 清掃のため、しばしの間隙。
 銀時は○○に退避を促した。

「そうする……」

 鼻を抑え、○○は場外へと向かった。
 外では相変わらず雨が降り続いていた。

 その雨の中、全身タイツの新八が即席の墓標に手を合わせていた。
 先程夜叉丸に食われ、そして吐き出されたパンの亡骸。
 本来は新八が食べるはずだった、そのパンデモニウム。
 ひょんなことでパンに惹かれた新八は、その死を悼んでいた。

「○○さん!!」

 キョロキョロと辺りを見回していた新八は○○の姿を見つけた。

「○○さん、聞こえましたか!? パンデモニウムさんの声……!」
「は?」

 新八曰く、パンデモニウムの声が聞こえたという。
 その声の出所を探すため、辺りを見回していた。

「そんなもの聞こえるはずないじゃない」

 パンはむしゃむしゃと食われ、今は土の中だ。

「うっ……思い出しちゃった……」

 粉々になったパンのグロテスクな姿が蘇る。

「じゃあ、僕にだけ……別れを伝えてくれたんですね……」

 新八はしょんぼりと肩を落とす。

「新八君、気をしっかり」
「はい。顔を上げて生きます。パンデモニウムさんが悲しみますから」
「そうじゃなくて」

 パンデモニウムの声が聞こえたと言っている精神が、○○には心配だ。
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