第59章 【第五十八訓】自称・雨女とか言うけど天気操る能力持ってない話
「どうしたの、これ」
昨日アルバイトから帰った時、複数の人達が万事屋へ出入りをしていた。
彼等の格好は大工だった。
何事かと二階に直行すると、壁に大穴が開いていた。
「○○さん」
出迎えたのは新八。隣の居間では定春が寝そべっている。
銀時と神楽の姿はなかった。
「また宇宙船でも突っ込んだ?」
以前、銀時が記憶喪失になった時、万事屋に宇宙船が墜落した。
その時程ではないが、似た惨状になっている。
「宇宙船ではないですが……」
「何回壊されるの、この家」
修理費用もバカにならにないというのに。
と思った時、○○は違和感を覚えた。
「今回は大工さん雇ったんだね」
○○の前には、きびきびと働く鳶の男達の姿がある。
坂本の宇宙船に家屋をぶっ壊された時は、出費を惜しんで万事屋四人で大工仕事に取り組んだ。
だが当然、家一軒の修理など素人に出来るはずがなく、トンカチやカンナで自らを傷つけた銀時や神楽が、痛みと怒りで暴れ、さらに破壊が行われることになった。
「前は頑なに大工呼ばなかったくせに……」
○○は頭の右側を押さえた。あの時の痛みが蘇る。
もう限界だと大工を呼ぶため走り出した○○に対し、銀時はその頭に巻かれていたタオルを掴んで妨害した。
ぎうぎうと頭を絞られ、○○は悲鳴を上げた。
「今回は、えっと……結野アナが支払ってくれて……」
突然に、思いもしない名前が出る。
「え? 結野アナ?」
新八は昼間の出来事を伝えた。
街で遭遇した結野アナを銀時が連れて来たこと、結野アナが実は陰陽師だったこと、結野アナを狙い鬼のような式神が現れたこと。
この穴は式神が襲って来た際に開けられたものだという。
到底信じられない話だが、新八が身も蓋もない嘘を思い言うとも思えない。
「じゃァ、この雨は……」
近頃、結野アナの天気予報が当たらなくなっている理由。
それは、彼女がお天気お姉さんをやっていることが気に食わない陰陽師による妨害のせいだという。