第59章 【第五十八訓】自称・雨女とか言うけど天気操る能力持ってない話
身支度を整え、モップを持ってフロアに出た。
早番での出勤時は清掃から始まる。
取りかかる前に、テレビの電源を入れた。
朝の情報番組『ズームアップ!』が流れる。
程なくして、天気予報のコーナーが始まった。
お天気キャスターは銀時が好きな結野アナ。
彼女はまず、今週で『お目覚めテレビ』を降板になった件で挨拶をした。
○○は窓の外を見上げた。
澄んだ青空といわし雲は、秋晴れの象徴ともいえる。
昨朝もこんな空模様だった。それが、唐突に雨が降り出し、○○は煙る街並みを帰路についた。
そしてたどり着いた二階には、大穴が開いていた。
「今日の天気は」
空から視線を下ろし、テレビ画面の結野アナに向ける。
「晴れでーす」
笑顔で伝えられた途端に、雷鳴が轟いた。
百発百中だった結野アナの天気予報は、いつからか百発百中の“ハズレ”になっていた。
「また降ってきたの?」
奥から出てきた店長は渋い顔をしている。
空模様は店の売り上げと直結している。
例年であれば、過ごしやすくなった秋は人々が町へ繰り出し、休憩がてら売り上げに貢献していく。
雷鳴の後に、視界が遮られるほどの雨粒が落ちてきた。
こんな豪雨では、不要不急の外出は控えるのが人々の常。
「店長、来て早々ですが、今日は上がってもいいですか」
「え? うーん、まァ、いいよ。お客さん少ないだろうから」
客が少なければ、当然少ない従業員で店は回せる。
手持ち無沙汰で賃金を取られるよりも、帰ってもらった方が助かる程だ。
「ありがとうございます。モップ掛けと備品の補充は終わってますから、あとはよろしくお願いします」
予感がする。
昨日、結野アナは万事屋に来ていた。
銀時が動く、予感がする。