第58章 【第五十七訓】野良猫への無責任な餌やリはやめましょう
月が街を照らす前に、○○は万事屋へと戻った。
新八と神楽は引き続き街を見廻っている。
大使館には手が出せなくても、これ以上、奴等の手に落ちる猫が出ないように。
夕闇が落ち始めた事務所は無人だった。
未だに銀時は戻っていないらしい。行方知れずになってから四日が経った。
神楽が言っていたように、騒動に巻き込まれているのだろうか。
大使館で問題を起こせば国際問題になる。溝鼠組との抗争にもなりかねない。
野良猫捕獲の裏に奴等が絡んでいると知り、三人を巻き込まないために銀時は一人で動いたのかもしれない。
○○はソファに腰を下ろす。
このまま帰って来ない……なんてことがあったらと思うと、胸がぎゅっとなる。
玄関が開く音が聞こえ、○○は顔を上げた。
「ん? 来てたのか、○○」
入って来たのは、この部屋の主だった。
「なんで電気つけてねーだ?」
「さよならも言えないかと思った」
銀時は眉をひそめる。
○○は無表情で銀時を見上げていた。
その目は自分を責めているようだった。
「さよならって……待て待て。四日空けたのは俺のせいじゃねーぞ」
四日に及ぶ無断外泊。音信不通。
それ以前にも愛想をつかされるようなことを多々しているが、突然別れ話を切り出されるとは思っていなかった。