第58章 【第五十七訓】野良猫への無責任な餌やリはやめましょう
「こんな話、信じられねェと思――」
「よかった」
○○は立ち上がると、銀時の胸に額を乗せた。
「○○?」
「帰って来てよかった」
――さよならも言えないかと思った。
銀時はその言葉の意味に気づく。
別れ話ではない。帰って来たことへの安堵の言葉。
「ぐおっ!」
○○の体へと回されかけた腕は、突き飛ばされたことで未遂に終わった。
「銀さん、臭い!」
○○は鼻を押さえる。
銀時の服から臭気がする。
「四日間、風呂も入ってなかったからな」
○○はブンブンと首を振る。
「違う。汗とかじゃない。もっと変な臭い」
銀時は襟に鼻を近づけ、臭いを嗅いだ。
「くっさ!」
汗の臭いではない。
土に埋まっていたアレの臭いが薄っすらと移ってしまったのだろう。
「何の臭いコレ? 今すぐお風呂に入って来て!」
臭いの元を○○に知らせることは出来ない。
そんな臭いを嗅いでしまったと知れば、今度こそ桂は八つ裂きにされるだろう。