第8章 【第七訓】原作第十九訓と第二十訓の間の話
「けえったぞー」
銀時が戻った時、リビングから楽しそうな笑い声が聞こえて来た。
神楽の声、新八の声、
「何だァてめーら、何がそんなに楽し」
「お帰りなさい、銀さん」
それから、○○の声。
「何してんだ、てめーはァァァ!」
見上げて来る○○の顔。
その姿を見るや否や、銀時は大声を上げた。大仰に眉をひそめる。
鼓膜が破れそうな程の怒声にも動揺せず、○○はそのまま銀時を見つめていた。
正確には、銀時の背後。
「てめ、新八! 二度とこいつを入れるなっつっただろーが!」
新八の胸倉を掴み上げ、銀時は揺する。
ソファの横に移動した銀時。それについて来るように後ろの物体も移動する。
○○の視線もそれに合わせて移動する。
「そんな約束、守るわけないじゃないですか! せっかく訪ねて来て下さってるのに!」
掴まれた手を払いながら、新八は反論する。
銀時は天然パーマの頭に手をやり、ぐしゃぐしゃと捏ね繰り回している。
「来て下さったじゃねーよ! 何度来りゃ気が済むんだ! 俺ァこいつのことなんて知らねェ! 知ってても知らねェ!」
指された指も意に介さず、○○は銀時の後ろを見つめている。
「世の中の全ての人に迷惑かけてるんですから、一人くらいの役に立とうと思えないんですか!」
「俺の頭ん中は糖分とジャンプで一杯一杯なの! 余計なもの覚えとくスペースないの! あ、あと結野アナ」
「余計なものしか覚えてねーだろうが!」
今度は逆に、新八が銀時の胸倉を掴み上げる。
「誰が余計なもんだ! 人妻だろうと、結野アナは俺の女神だ! この世で唯一のビーナスだ!」
「何言ってんだ! お通ちゃんがビーナスだ!」
渦中の○○そっちのけで、二人は睨み合っている。
当の○○は黙っている。
お帰りと言い、銀時を見上げたまま、瞬きもせずに見つめている。
ハァハァ言っている、銀時の後ろのその大きなものに見惚れている。
銀時が右に動けば、それも右に。銀時が左に動けば、それも左に。
○○の視線も右に左に。