第57章 【第五十六訓】漫画キャラにとって読者は神様です
○○は1位と6位のいる場所へとやって来た。
ここは落ち着く。桁の少ない数字ならば気にならない。
「梅雨はやぁねェ。ジメジメして」
○○は13位に寄りかかり、ジャンプを読んでいる。
「13……定春もなんか湿ってるね」
喉を触ると、13位は目を細めた。
「癒されるー」
下の階には24位、37位、42位がいる。
夕刻には票の入っていない巷の客達がやって来て、店は数字で溢れるだろう。
1位と6位もそれぞれ、まったりと寛いでいる。
雨、依頼なし、家から出る必要なし。しかし金もなし。
「なんか、表が騒がしいね」
そのうちに、インターホンが鳴らされた。
「銀さん、お客さん」
「お前が出ろ。暇だろ」
「そっちだって暇なくせに」
○○はジャンプを置き、玄関へと向かった。
依頼人ならありがたいが、こんな雨と数字の中、外出する依頼なら御免被りたいと思いながら扉を開く。
「はい」
そこにいたのは、見たこともない人達だった。
全員が三桁の数字を携えている。
街ですれ違っても記憶にも残らない、モブな人達。
「数字がない……!!」
彼等は○○を見て目を見開いた。
「“神”がいるぞ!!」
「崇め奉れ……!」
その言葉を皮切りに、怒涛のように人が押し寄せる。
どいつもこいつも同じような顔に同じような髷を持つ、明日には顔を忘れていそうな町人だ。
「次回は俺に清き一票を!」
「いや、俺に一票を……!!」
「ちょっと、何!?」
○○は扉を閉めかけたが、一足遅く、モブ達は雪崩れ込んで来た。
「何の騒ぎだ? 依頼人か?」
奥から1位が顔を覗かせると、モブ目は一斉にその数字に向いた。
「1位だ! 1位がいたぞ……!」
土足のまま部屋へと飛び込むと、数字の大群が1位に襲いかかった。