第56章 【第五十五訓】吉原炎上篇は諦めて回想にした話
「お前みてェに胸の小せェ女は、本来眼中にねーんだ。それなのに、俺ァお前に惚れたんだ」
銀時の声音を○○は真似る。
「そんな女、○○しかいねーんだからな。だから、お前はそのままでいい」
ドヤ顔で放たれる○○の言葉に、新八は頬を引きつらせる。
虫唾が走る。
「銀さん、あの時、そんなこと言ってたんですか?」
クサい。
そして、似合わない。
新八と同じように、銀時も頬を引きつらせていた。
「そんなクサい台詞を言った覚えはねェ」
「言った」
「言ってねェ」
銀時と○○は互いに譲らない。
「言った」
「言ってねェ」
「言った」
「言ってねェ」
「言った」
「言ってねェ」
「言った」
「言ってねェ」
「いつまで続けるつもりですか!」
新八が割り込む。このままでは埒が明かない。
銀時が本当にそんなことを○○に言っていたとしても、新八と神楽の前で認めることはないだろう。
○○に都合のいい妄想が多少含まれていたとしても、あまりにも恥ずかしい。
「とにもかくにも、強くなりたいんです。僕達」
そのための修行を請うために、新八と神楽は銀時に願い出ていたのだ。
銀時と○○の痴話喧嘩にはいつまでも付き合いきれない。
「メンドくせーよ」
銀時は椅子にふんぞり返ったまま、まるで取り合わない。
「そういう事だったのね」
妙が現れ、長谷川が現れ、桂が現れ、おかしな修行を課されそうになった新八と神楽は、自分の道は自分の力で進むことを決意した。