第56章 【第五十五訓】吉原炎上篇は諦めて回想にした話
「私もその玉、欲しい」
銀時が胸に詰める玉を見ながら、○○は強請る。
「女のお前にゃ、必要ねーだろ」
三人が手にしていた玉は、煙玉だった。
女装のための道具であり、武器でもある。
銀時、新八、神楽は煙玉を胸部に詰めている。
「神楽ちゃんも女の子だよ」
吉原を統べる鳳仙という男が、夜兎の王と呼ばれた男だということ。
宇宙海賊『春雨』の幹部等が、吉原にやって来ていること。
そのうちの一人が、神楽の兄、神威であること。
「ガキには必要だろ」
そして、彼等に晴太が攫われたこと。
晴太と日輪を会わせるには、彼等を敵にしなければならないこと。
新八に聞いた話は、大凡そんな所だ。
四人はまさに、鳳仙の牙城に乗り込まんとする所だった。
「私もガキみたいなもんじゃない」
平野部だの、幼女体型だの、普段は散々にこき下ろされている。
「○○さん、今はそんなことを言っている場合では……」
爆乳パチ恵と化した新八は○○をたしなめる。
煙玉は六つしか用意していない。
「新八君にはわからないよ、小胸女の気持ちなんて」
「そりゃ、僕にはわかりませんけど……」
「所詮、新八君も銀さんと同類なんだよ。胸の大きな女の方がいいんでしょ」
「……いや、何の話です?」
今まさに、命を懸けた戦いに挑まんとする所だ。
そんな最中に、貧乳だ微乳だ議論している場合ではない。
「○○にゃ、こんなもん必要ねーんだって言ってんだろ」
キッと睨みつける○○に近づき、銀時はごにょごにょと耳打ちする。