第56章 【第五十五訓】吉原炎上篇は諦めて回想にした話
新八と神楽は出て行き、妙、長谷川、桂も帰途に就いた。
部屋に残っているのは、銀時と○○だけ。
「新八君も神楽ちゃんも、自分の手で道を切り拓けそうだね」
その道が、高く険しい山道だとしても、あの二人なら超えて行けるだろう。
「私も超えて行かなきゃ」
銀時に背中を任せてもらえるくらい、強くなりたい。
真剣な眼差しを浮かべる○○の顔の下を、銀時は見遣る。
「お前に山はねーけどな」
銀時の視線は、平ぺったんな○○の胸に注がれていた。
「誰も胸の話なんかしてない!」
銀時は立ち上がり、○○を見下ろした。
「お前の修行なら、俺が夜通し付き合ってやる」
「銀さん」
メンドくせーよ。
修行なんてやりたくねーよ。
例えるのもメンドくせーよ。
あれ程、修行を嫌がっていた銀時が、自分のためならば動いてくれる。
銀時の想いが胸に染み入る。
○○の肩に銀時は手を置き、顔を覗き見た。
「○○が成長しねーなら、俺の責任だ」
「そんなこと――」
いつになく真剣な面持ちに、○○の鼓動は高鳴る。
「俺がもっと揉んでやらァ、ちったァ成長すんだろ。夜通し付き合ってやる」
真顔で口に出される言葉に、○○は眉間をピクピクと動かす。
「いい加減にしろ、このドグサレ野郎!!」
○○の金的蹴りが炸裂。
防ぐ間もなく、銀時は床に崩れ落ちた。
「人が真面目に言ってんのに! 銀さんに背中を預けてもらえるくらい、強くなりたいの、私は!」
股間を押さえて銀時は蹲っている。
ピクピクと痙攣し、今わの際に立たされている。
その痛みは、鳳仙に負わされた傷の何十倍にも及ぶ。
「あ、預けらんねーよ……。背中側からの攻撃が、一番、怖ェ、よ……」
チーンという効果音を残し、銀時は意識を失った。