第56章 【第五十五訓】吉原炎上篇は諦めて回想にした話
「え?」
「何だい。聞いてなかったのかい」
アルバイトから帰った○○は、お登勢にそのことを聞いた。
今日、日輪に会いに吉原へ行くと、晴太が言っていたと。
身寄りのない晴太はお金を稼ぐため、『スナックお登勢』で働いていた。
銀時、新八、神楽も晴太に付き添っているという。
「アンタも一緒に行ったもんだと思ってたよ」
○○は何も聞いていなかった。
晴太のことは○○も案じていることを、当然、銀時も知っている。
それなのに、○○がいない間に行ってしまうとは、如何なる理由があるのだろう。
まるで、○○を吉原に行かせたくないかのよう。
「アイツ、まさか……!」
場所は遊廓・吉原桃源郷。
晴太を送り届けるという名目にかこつけて、女を買うつもりでは。
いやしかし、新八と神楽も一緒ならばそんなはずはあるまい。
しかし、心の底からは信じることは出来ない。
女を買うことはせずとも、女性に囲まれ鼻の下を伸ばしている姿は容易に想像が出来る。
○○がいては、羽を伸ばすことも出来ない。そう思って、除外されたのでは。
沸々と、○○の心に疑念が湧く。
「行って来ます!」
アルバイトから戻ったばかりだが、○○は部屋に上がることなく、表へ飛び出した。