第56章 【第五十五訓】吉原炎上篇は諦めて回想にした話
――強く、なりたい
○○も思う。
「手ェ出すなよ。お前のお守りしながら、戦える相手じゃねェ」
鳳仙と戦わせるためではない。
隙を見て晴太を連れて逃げ出させるために、銀時が○○を同行させたことはわかっていた。
力になれない自分が、不甲斐なく、情けない。
せめて、銀時の足手まといにならない程に。
せめて、銀時に余計な心配はかけさせない程に。
背中を預けて戦える、対等な立場で戦場に立てたなら。
そしてもう一つ、吉原に足を踏み入れて思うことがあった。
百花繚乱よりどりみどり、右を見ても左を見ても、華のある女性が盛りだくさん。
方々から集められた別嬪の中には、○○にはない魅力を持った女性も数多い。
それすなわち、女性特有の膨らみ。
――巨乳になりたい……!!
○○は貧乳。まろやかに言えば、微乳。
――少しでも胸を大きくしたい……!!
ということで、冒頭につながる。
「安心するヨロシ。○○は美乳ヨ」
「そんな慰めはいらないよ」
「私のを見るアル。ぺちゃんこネ」
「神楽ちゃんはまだ成長過程だから。今おっぱい――じゃない、いっぱい栄養を取れば、数年後にはきっと大きくなってるよ」
「何ですかその言い間違い。頭の中、どれだけチチでいっぱいなんですか」
「修行も巨乳も、勝手にやってくれ」
銀時は他人事のように言い放つ。
「元はといえば、銀さんが……」
ブツブツと、○○は唇を尖らせる。
本来、銀時が巨乳好きだということは知っている。
そうでなければ、○○は自分が貧乳だろうが微乳だろうがこだわらない。
銀時は溜め息を吐く。
「だーから、言っただろ。あん時に」