第54章 【第五十三訓】文字だけで互いを知ることは難しい話
謝罪してまでよりを戻そうと思ったのは、年始の温泉旅行が原因だった。
温泉に出掛けたのは銀時の他には新八、神楽、そして妙。
四人でゆっくりして来なとお登勢は予約をしてくれたのだが、○○は同行せず、代わりに妙に行ってもらった。
そのスタンド温泉で銀時はヒドイ目に遭った。
恐怖の中、ここに○○がいてくれたらと何度思ったかしれない。
追い打ちをかけたのは、温泉宿の女将の言葉。
のろける相手もいないのかと問われた時に、○○のことを考えて涙した程だ。
「許してくれ」
銀時の口から出ているとは思えない言葉に、○○は目を丸くす。
温泉でのことがあり、さらに新八が女子と文通を始めたことで、何となく人恋しさに陥っていた。
すぐそこに好きな女がいるのに、どうして触れることも出来ないのか。
「もう女の子とイチャイチャしない?」
「しねェ」
「記憶がなくなるまで深酒しない?」
「ああ」
銀時は○○を抱きしめる腕に力を込めて宣言する。
聞いてはみたものの、○○はその言葉をまるで信じていない。
いつもいつも、口先ばかりで乗り切るのが銀時だ。
舌の根も乾かぬうちに同じことを繰り返すだろう。
とはいえ、ここで突き放せば終わってしまう。
別れたくないならば、妥協するしかない。
「次はないからね」
仲直りした二人はラブホテル『極楽浄土』に直行し、睦言の中で新八が文通をしていることを聞いた。