第54章 【第五十三訓】文字だけで互いを知ることは難しい話
長く続いた仲違いが終わり、元通り丸く収まったのは、つい先頃のこと。
クリスマスを迎え年末を迎え、年が明けてもなお、○○と銀時の喧嘩は継続していた。
アルバイトを終え、帰宅しようと○○は戸を開いた。そこに見慣れた銀髪がいた。
「……何やってんの、銀さん」
○○は眉間に皺を寄せる。
ここに彼がやって来たのは初めてのことだ。
銀時は睨むような目で○○を見下ろして告げた。
「話がある」
銀時は背を向けて歩き出した。
ついて行く道理はないが、無視をするのは逃げるようで癪だ。
銀時がわざわざ足を運ぶということは、大事な用件があるからに他ならない。
○○は銀時の後ろをついて歩いた。
気のせいだろうか、その背中からは不穏なオーラが出ている気がする。
これはいよいよ別れ話かと、○○は顔を伏せる。
なんでこんなことになったのだろうと、表情を暗くする。
別れたかったわけではない。
だからといって、別れたくないとは言いたくない。
悪いのは銀時だ。
銀時と喧嘩をした時のことを思い出す。