第53章 【第五十二訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ三
沖田は土方に目を向けた。
「その理屈だと、土方さんと○○もプラスとマイナスで上手くやっていける仲ですね」
土方は眉間をピクリと動かした。
土方以上の反応を示したのは桂。
「○○だとォ!?」
桂も彼等と同じく、沖田の口から○○の名が出たことに疑問を持った様子はない。
桂も然り。○○は万事屋にいるうちに真選組と関わるようになったのだろうと思っている。
その呼ばれ方のみに反応を示した。
「貴様ァ! ○○殿を気安く呼び捨てにするな!!」
怒鳴られた沖田は気にする風もなく飄々とし、土方が言葉を返す。
「そりゃテメェだ。攘夷志士のくせに気安く○○殿呼ばわりすんな」
彼等が勘違いしてくれているならば安心だ。
○○は安堵したが、まだ秘密がある。それを知られたくはない。
桂は揚々と声を上げる。
「俺と○○殿の仲をなんと心得る!」
自分と桂が幼なじみらしいということ。
「俺と○○殿は子――」
突然おびただしい金属が襲来し、桂は口を閉ざす。
桂は壁際まで吹き飛ばされた。その体をぐるりとマイナスドライバーが囲んでいる。
それは壁へと突き刺さり、無数の穴を開けている。
「俺と○○殿は……なんて言おうとした?」
「俺と○○殿は……子どもの頃に契りを結んだ仲だと……」
シャアアアと○○の髪が総毛立つ。
毒蛇と化した髪を操るメドゥーサの如く、○○はマイナスドライバーヘアを器用に操る。
「脳ミソ分解して、アンタの記憶も失くしてやろーか?」
桂は震える。