第52章 【第五十一訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ二
〈銀子ォ! 猿子ォ! それから、え、えーっと……カグーラ……ジャ、ジャスアント? 待ってよォ!!〉
○○は手を振りながら駆け寄った。
神楽のコードネームを呼ぶのは恥ずかしい。
〈置いて行かないでよォ!!〉
〈テメー、何しに来た〉
銀時は冷たい目を○○に向ける。
額に青筋を浮かべかける○○だったが、新八の言うように今は喧嘩している場合ではない。
〈何しに来たはないでしょ、銀子。私達、マブダチじゃなァァァい〉
○○は銀時の肩を叩く。銀時は不快そうに眉をひそめる。
○○は銀時から目を離すと、ゲーマー星人に挨拶をする。
〈ちはーッス。はじめましてェ~〉
○○はギャルピースを右目の横で示し、ウインクをする。
○○は自身の格好に合わせ、不必要にギャルを演じている。演じている、つもりである。
〈……アレ、ギャルのノリのつもりなのか……〉
隠れ見ている新八は、○○の行動に頬を引きつらせる。
〈全身タイツ超ナウいですねェ!〉
○○は自身のズレに気づくことなく、新八を極寒の地へと陥れる。
〈何言ってんだ、あの人!!〉
出て来る言葉の数々が悉く遺物のようだ。
身近でこれらの言葉を使う人物は普段は一人しかいない。
〈あのおなごは言葉のセンスがチョベリグだ〉
新八の横で成り行きを見守っている桂は、バッチグーと親指を示す。
〈お前は黙ってろ〉
横で太古の言葉を発する桂に対し、新八は殺意を覚える。
〈触角マジヤバ! 渋谷系のカリスマってカンジ~?〉
ヤバイのはアンタだ! どいつもこいつも! と新八は脳内でつっこむ。
キャイキャイと○○はゲーマー星人に話しかけるが、彼等が○○のノリに同調することはなかった。
特に先輩と呼ばれている男は、目を合わせることもなく神殿の奥へと向かってしまう。