第52章 【第五十一訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ二
男は一足で崖を駆け上がると、大斧を振るった。
銀時達と思われる一団に襲いかかろうとしていたモンキーは、一瞬にして倒された。
「すごい……」
○○は崖の下からその様を見守っていた。
敵を倒した男は、再び地上へと降りて来た。○○を抱え、再び一足で崖を駆け上がる。
男に抱えられた○○を見て、新八に似た風貌の青年が「あっ」という風に口を開いた。
〈○○さん?……ですよね?〉
〈そうだよー。やっぱり新八君だよね? わかりやすいなァ〉
〈○○さんもある意味わかりやすいですけど〉
○○はかつて、現実世界で一度だけ見せた格好をしていた。
目の縁は黒塗りのメイクが施され、目の大きさは普段の一.五倍。
茶色ソバージュのロングヘアは頭頂部で括られ、頭の上で盛り上がっている。
いつぞや『スナックすまいる』で夏カゼが蔓延し、妙以外の従業員が全滅してしまうという非常事態に陥ったことがあった。
その際、○○は臨時の従業員としてキャバ嬢へと変身した。
せっかくだからと妙にキャイキャイとメイクを施された結果、これが○○だとは気づかぬ程のギャルへと変貌した。
その格好を○○はゲーム内の分身として使っていた。
〈どうして、○○さんが“M”と?〉
〈“エム”?〉
○○は首を傾げる。
新八は黒づくめの男を示した。
〈彼ですよ。伝説のハンター、“M”〉