第52章 【第五十一訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ二
○○と黒づくめのハンターはフィールドを進んだ。
鬱蒼とした森を抜け、乾いた砂漠地帯へとやって来た。
不気味な雰囲気が漂っていた森とは違い、広大な平野は穏やかに見える。
心に余裕の生まれた○○は前を歩く背中に声をかける。
〈あのー、いつからこのゲームを?〉
男は振り返ることなく、前を進む。
〈さァな。いつだったか……この世界が出来た頃だということは確かだな〉
○○は目を剥く。超絶のベテランハンターだ。
彼を仲間にすれば、このゲーム内で奴等――ゲーマー星人を捜す手掛かりにたどり着けるのではないか。
〈あの――〉
〈何も言うな〉
男は振り返り、○○の目を見据えた。
〈俺は全てを知っている〉
男は再び歩みを進めた。
何の迷いもなくひたすら先を行く。
まるで、銀時達の居場所を知っているように。
一体、この男は何者なのだろう。
〈お前さんの仲間もゲーム初心者だろう〉
〈ええ〉
〈ここは『D-51地区』と言ってな。一流のハンターでも逃げ出す最強モンキー共の巣窟だ〉
〈え?〉
○○は周囲を見回す。
穏やかに見えていたフィールドが、突然禍々しい場所に思えて来る。
〈初心者がここで神獣に遭遇していたら……一溜りもないぜ〉
○○は不安を掻き立てられる。
〈まァ、アイツらはそう簡単にやられるタマじゃないだろうがな〉
男は口元を緩めた。
〈悪運だけは強そうな連中だ〉
○○は不思議な感覚を抱いていた。
確かに、あの三人が銀時、新八、神楽ならば、不慣れなゲーム内でもどうにか危機を脱するのではないかと思えなくもない。
それは○○があの三人のことを知っているからであって、一瞥してわかるものではない。
だが、この男はそれを見抜いている。
〈いたぜ〉
男は顔を上げて呟いた。
男の視線を追った○○はギョッとする。そこには新八によく似た風貌の青年と、集会所で彼と共にいた二人のハンターの姿があった。
それに、女性が一人と、屈強な男が二人。
それから、今にも彼等に襲いかからんとしているモンキーが一匹。