第52章 【第五十一訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ二
三人組を追い、○○はフィールドへと足を踏み入れた。
「ひぃー、ここってもう敵が出る場所だよね? ちょっとー、みんなどこまで行っちゃったのー!」
○○は道を急ぐ。
装備は剣が一本のみ。現実ならいざ知らず、慣れないゲーム内では戦いとなれば一溜りもない。
「銀さーん、あ、いや、新八くーん!」
喧嘩中の銀時に助けを求めてなるものかと、○○は頭を振る。
「敵に遭わないようには身を隠して進めばいいのかなァ? でもゲームだしなァ」
いくら身を隠した所で、プログラム上は何の意味も成さないのではないか。
そんなことを考えながら歩いていた○○の頭上から、
「うわ! 出た!」
巨大なモンキーが降って来た。
「ええーっと、逃げる選択肢は……あった!」
○○は“にげる”ボタンを連打する。
――逃げきれない。
「じゃあ“にげる”を選択肢に入れるんじゃねェ!!」
○○は“たたかう”“にげる”の選択から再度“にげる”を連打する。
――逃げきれない。
「ですよね!!」
○○は“にげる”を連打し続ける。
モンキーの一瞬をついて逃げられるタイミングがあるのではないか。
そんなプログラムが組まれているのではないか。
そんなことを思いつつ連打し続ける。
――逃げきれない。
――逃げきれない。
――逃げきれない。
「奇跡はないの!?」
このまま“にげる”を連打していても時間が無駄に経過するだけ。三人組は先を進んでしまうだろう。
とはいえ“たたかう”を選んでもゲームオーバーは目に見えている。
またフリダシから始めたらゲーム内で三人と落ち合うことは不可能だ。
――逃げきれない。
――逃げきれない。
――逃げきれない。
○○とモンキーの睨み合いが永遠に続くかと思われたが、
「!?」
突然の攻撃でモンキーが地面へと倒れ伏した。その姿が消えていく。