第51章 【第五十訓】マイナスドライバーもあまり見ない話 其ノ一
さて、と、○○は空を見上げる。
表に出たはいいものの、どこに向かえばいいのか全く見当がつかない。
たまに伝えたように病院に行ってみるか。しかし、髪の毛がドライバーになった症例を扱ったことのある病院などあるものか。
○○は上階を見上げた。
本来なら、真っ先に銀時に相談する所だ。だが、銀時とは些細なことから喧嘩をしてしまい、ここ数日は顔も合わせていない。
相談をするにはまず喧嘩の件を謝らなければならない。そんなことは御免被る。
どうしたものかと思っていると、上から扉が開く音がした。
「銀さん、待って下さい」
聞こえて来たのは新八の声だ。銀時も一緒にいるようだ。
○○は階段脇の路地へと身を隠した。
「事は一刻を争うんだ。待ってられっか」
「無闇に動いても得られるモノなんて何もないですよ!」
「テメーに俺の気持ちがわかるか。ああ゛?」
○○は眉をひそめる。
銀時と新八が何やら言い合っているが、銀時はずいぶんと機嫌が悪そうだ。
あんな状態ではなおさら顔を見せることなど出来ない。やはり、銀時に相談は出来ない。
○○の目の前で銀時と新八が立ち止まった。幸い、二人は○○の存在には気づいていない。
二人は降りて来た階段を見上げていた。
「大丈夫? 神楽ちゃん」
新八が問いかけると、神楽の声が聞こえた。
「足が思うように動かないアル。階段は降りにくいネ」
「まァ、その体じゃあ、仕方ないよ」
新八が吐息をついた。
神楽は体調を崩しているのだろうかと、○○はその身を案じる。
やがて目の前に現れた神楽の姿を見て、○○は思わず声を上げた。