第48章 【第四十七訓】盗撮した亀を捕まえて竜宮城に行ってみた 其ノ一
「○○さん、またふざけてるんですか?」
新八は頬を引きつらせる。
随分前になるが、再度記憶を失ったフリをした○○に新八はからかわれたことがある。
この状況で○○がふざけるとは思えないが、また記憶が飛んでいるとは思いたくはない。
○○は新八を見たまま黙っている。
「……君は誰?」
騙された時と同じ台詞を○○は口にした。
だが、今度は演技ではない。
「流されたショックでまた記憶が飛んじゃったんですね」
以前、銀時と近藤が記憶を失った時も、少しの衝撃で何度も記憶が飛んでしまっていた。
それと同じことが○○の記憶をつかさどる脳機能でも起こっているのだろうと、新八は思う。
「オイオイ、こんな時に冗談だろ。めんどくせェ」
銀時は耳をかっぽじる。
ただでさえ、この無人島から帰還することを考えねばならないというのに。
「めんどくせェって、一大事ですよ!」
「一大事っつってもなァ、元々記憶喪失だったんだしなァ。どうにかなんだろ」
銀時は○○に目を向ける。
「何? ○○殿が記憶喪失だと? 僕は初耳だ」
九兵衛は○○が記憶喪失だということを知らなかった。
「とにかくだ」
銀時は○○の目の前に顔を近づける。
○○は一歩退いて距離をとる。
「今はこの島から脱出する方法とそれまでここで暮らす方法を考えなきゃなんねーんだ。○○は俺達に従え。いいな」
○○は眉間に皺を寄せて銀髪男を見る。
会話を聞く限り、自分が彼等の知り合いであるということに間違いはないようだ。
それに、この銀髪の男は同じ服を着ている。
自分の記憶が全くない以上、信じるしかない。