第48章 【第四十七訓】盗撮した亀を捕まえて竜宮城に行ってみた 其ノ一
波打ち際で○○は目を覚ました。
同時に咳を吐く。口の中が塩辛い。
○○は周囲を見渡すが、そこには誰の姿もない。
どこまでも続く砂浜と海。
内陸には木々が生い茂った森が見えるだけ。
はて、ここはどこだろう。
それ以前に、自分はそもそもどこにいたのだろう。
さらにさらにはそれ以前に、自分とは一体――
「……私は誰?」
○○は自分の両手を見つめた。
自分は人間である。それはわかる。
人間とは、二足歩行で歩く猿が進化した哺乳類である。
それもわかる。
しかし、自分は一体、誰だろう。
○○は自らの着込んでいる法被に文字が書かれていることに気がついた。
「『沿岸警備隊』?」
自分は、この海岸を護衛する任を担っていたモノなのだろうか。
それにしては、警備するようなものが何もない。
なにせ人っ子一人いない。
そう思った矢先、ジャリジャリと砂を踏む足音が耳に届いた。
○○は近くの大岩の後ろに隠れ、近づいて来る人物から身を隠す。
歩いて来たのは、青色の着物を着込んだ長髪の男。
彼は突然、歌いながら放尿を始めた。
○○は表情を歪ませる。間違いない。変質者だ。
自分は、あのような輩から清い海を守護する正義の味方なのだろうか。
放尿を続ける長髪男の背後に、さらに複数の人影が見えた。
男は一人ではないのか。何らかの悪の組織かと、○○はゾロゾロと近づく集団に目を向ける。
銀髪の男に、未成年の少年と少女。見目麗しい妙齢の女性と、同じ年頃の小柄な眼帯をつけた少年。さらには怪しげなサングラスの男。
四人からは不穏な雰囲気は感じないが、銀髪とグラサンは胡散臭げだ。
彼等は長髪男に近づくと、輪を作って密談を始めた。
やはり、仲間のようだ。