第47章 【第四十六訓】真選組動乱篇 其ノ三
伊東の部屋に目を向けていた○○の耳に、ドゴォという爆音が聞こえ振り返る。
そこには黒煙が上がっていた。
「まさか……」
攘夷浪士の襲撃だろうか。
今日は葬儀だ。部外者も敷地内に立ち入りやすい。
内乱で戦力が削られた今を狙って、攘夷浪士が襲って来ても不思議ではない。
○○は駆けつけた。
「トシ!?」
そこで見たのは、バズーカを手にした土方だった。
謹慎処分は解けていたが、今回の件に責任を感じた土方は自ら謹慎処分の延長を申し出ていた。
その土方が、隊服を身にまとってここにいる。
○○はわずかに表情を綻ばせて土方に近づいた。
「ビックリさせないでよ。今の爆音、トシが――」
部屋の前に来ると、畳の上にうつ伏せになって転がっている人物が目に入った。
○○は目を見開く。
「やっ……」
それは、死んだはずの元同僚。
「山崎?」
○○は呆然とその姿を見下ろす。
遺体は発見されていないため、棺桶から転がり出て来たわけではあるまい。
それに、目の前の山崎は動いている。
死装束を着込み、額には天冠をつけ、幽霊のような格好をしているが生身に見える。
山崎は頭を押さえながら起き上がった。
小さく「いてててて」と唸っている。
死んだ人間が痛みを感じるとは思えない。
「山崎……」
○○の声に、山崎は四つん這いの格好で振り返った。
「○○さん」
山崎は畳に腰を下ろした。
「帰って参りました」
恥ずかしながら。
山崎ははにかむように笑い、○○を見上げた。