第47章 【第四十六訓】真選組動乱篇 其ノ三
真選組の屯所には、喪服姿の人々が続々と集まっていた。
今日は葬儀が行われる。
○○は椅子に座っていた。山崎の部屋で――
騒動の後、○○は屯所に身を寄せていた。
葬儀の準備も手伝わなければならない。
たくさんの隊士を喪った。
山崎は本当に死んだのだろうか。
伊東派の隊士が血まみれの山崎を発見したと言っていたが、遺体は見つかっていない。
だが、騒乱が収まっても、山崎は帰って来なかった。連絡もない。
彼はもう帰らないと、受け入れざるを得ない。
山崎とて真選組の一員。監察とはいえ、常に危険は隣り合わせ。
そんなことはわかっていた。
それでも、親しくしていた人物の死に直面するのは初めてのこと。
簡単に受け入れられるわけはない。
「山崎……」
部屋を見回す。山崎の痕跡。
山崎と初めて会った日のことを思い出す。
○○は首を傾げる。初めて会ったのは、いつだっただろうか。
思い出せない。気がつけばいつも山崎は傍にいた。
○○は時計に目を向けた。既に葬儀は始まっている。
行かねばならない。ちゃんと送り出してやらねばならない。
○○は重い足取りで山崎の部屋を出た。
葬儀が行われている居間に向かう途中、○○はかつて暮らした部屋の前で足を止めた。
取っ手に手をかけ引くと、いとも簡単に開いた。
主を亡くした部屋には、鍵がかけられていなかった。
○○が使っていた頃とは違い、壁一面が書籍で埋められていた。
題名だけで頭が痛くなりそうな堅い本ばかり。
唯一の鍵つきの部屋。
安全を考慮して○○に使わせていた部屋は、屯所の中でも一番安全な場所にあるため、攘夷浪士の襲撃を受けても危険は少ない。
道場からも遠く、朝の訓練による騒音に悩まされることもない。
参謀として招かれた伊東は真選組内で重宝されていた。
○○が屯所を出て以来、無人となっていたこの部屋を伊東は所望し、近藤は明け渡した。