第46章 【第四十五訓】真選組動乱篇 其ノ二
「あの男が伊東……」
膝を折り、沖田の右腕に手を当てながら○○は呟いた。
沖田は反乱隊士との乱戦で右腕を負傷していた。
力では圧倒的に沖田が勝っていたが、数の多さに沖田といえど無傷ではいられなかった。
骨には異常がなさそうだ。痛みはすぐに引くだろう。
「あの男が……」
近藤・土方の暗殺を企て、山崎を死に追いやった男――
○○は立ち上がる。
列車内には○○と沖田と近藤、新八と神楽が残っている。
土方は伊東を追った。
「……近藤さんは、知ってるの? 山崎のこと」
近藤は首を傾げた。
山崎が殺害されたという時刻には屯所を後にしていたため、何も知らない。
沖田にとっても初耳のことだった。
近藤は○○が身にまとっているものに目を滑らせた。
「その制服、山崎のものか」
○○は頷く。
本当に、山崎はもうこの世にはいないのか――
あの男ならば知っているだろう。
○○は前方の車両に目を向けた。
鬱蒼とした森を抜け、列車は橋上を走行していた。
「……!」
突然の爆風と黒煙に○○は目を閉じる。
足元がぐらつき、座席の背凭れに手を乗せた。
目を開けて愕然とする。
橋が真っ二つに分断され、濛々と黒煙が上がっている。
「ト、トシ……!」
前方の車両には、土方と伊東が乗っている。