第45章 【第四十四訓】真選組動乱篇 其ノ一
正午過ぎ、アルバイトから帰った○○は万事屋へと向かった。
階段を上る○○の脳裏に浮かぶのは、今朝方、山崎からかかって来た土方の行方を尋ねる電話の内容。
心当たりのある場所は捜したと山崎は言っていた。
○○には土方の行きそうな場所など皆目思い当たらない。
真選組にいた頃、○○が土方と顔を合わせていたのは屯所だけだ。
土方にとって真選組は命そのもの。
そんな土方が身を置きそうな場所などどこも思いつきはしない。
自分一人では土方を捜し出すことは不可能だろう。
銀時に相談して、万事屋への依頼という形で捜してもらおうと○○は考えている。
しかし、銀時が土方捜しなど手伝ってくれるだろうかという懸念はある。
玄関を開けると、そこには銀時のブーツ、神楽の靴、新八の草履の他に一足の革靴が置かれていた。
依頼人でも訪れているのだろうかと思いながら○○は通路を進む。
ガラス戸をノックし、○○は静かに開いた。
「失礼します」
依頼人が来ているのならば、ズカズカと踏み込むわけにはいかない。
「……」
そこには銀時、新八、神楽ともう一人男性がいた。
神楽に向けて携帯電話のカメラを向けていた男はガラス戸の開く音で振り返った。
その顔を見て、○○は開けたばかりのガラス戸を閉める。
「……」
○○は額を押さえて頭の中を整理する。
見えたのはこれから捜さねばならぬと思っていた人物の顔だった。
だがその格好はとてもその人物のものとは思えなかった。
頭にハチマキを巻き、デニム生地のベストに身を包んでいた。
他人の空似かと、○○はもう一度ガラス戸を開いて確かめる。
「……」
再びガラス戸を閉め、○○は頭の中を整理する。
他人の空似というにはあまりにも似すぎている。
双子の兄弟か? そんなものがいるとは聞いたことはないが。
額を抱える○○の目の前でガラス戸が開く。