第45章 【第四十四訓】真選組動乱篇 其ノ一
「あれ? 山崎さんまた来たんですか」
今の今まで新八はそこに山崎がいることに気がついていなかった。
新八は首を傾げる。今朝、万事屋に来た時も山崎の姿を見かけていた。
「お前さっきも来てたアルな」
小一時間程前、酢昆布を買いに出た時、神楽も山崎を目撃していた。
「そういやァ、窓の外に黒い奴がいたな」
銀時は応接室の窓から黒い服を着た男が路地でコソコソしているのを目撃していた。
気に留めていなかったがそれは山崎だったのかもしれない。
「山崎さんもしかして……○○さんが出て来るまでウロウロしてたんですか?」
新八は山崎に白い目を向ける。
脳裏に浮かぶのは姉の廻りをうろついているゴリラの存在だ。
「え、いや、そ――いでででで!」
銀時は山崎の頭に手を乗せ、ギリギリと締め上げる。
「真選組は揃いも揃ってストーカーの集団か?」
「ち、違います。お、俺はただ刀を……」
「俺の刀? テメェの鈍ら刀で○○をイかせられるとでも思ってんのか?」
「その刀じゃないです!」
今朝方、鍛冶屋で山崎は新しい刀『長船M-Ⅱ』を受け取って来た。
○○に自慢しようと思いここまで来たが、○○はなかなか姿を現さなかった。
わざわざ自慢しに来たと思われたくないので偶然を装って会い、それとなく刀に気づくように腰を動かしてアピールしていたが、全く気づいてはくれなかった。
「○○に手ェ出そうなんざ百万年早ェ!」
「ギャアァァァ!」
銀時に股間を蹴り上げられた山崎は力なくその場に倒れ伏した。