第45章 【第四十四訓】真選組動乱篇 其ノ一
「大体なァ、冷蔵庫に入れて放置なんてな、食ってくれって言ってるようなもんだ!」
「しょうがないでしょ! こっちの冷蔵庫に入れといたら一瞬にしてキャサリンに食べられちゃうんだから!」
「キャサリンも私達も同じようなものアル!」
「自分で言うなァァ!!」
三人はぎゃあぎゃあと喚きながら一つのプリンを取り合っている。
「あの……」
たかだかプリン一つを巡って往来のど真ん中で大声を上げる大人二人と少女が一人。
自分は一体、何を見せられているのだろうと山崎は途方に暮れる。
「ここは年長の俺に譲るのが筋だろ!」
「銀さんは次の検査で血糖値が下がるまで甘いもの禁止って言ったでしょ!」
「大の大人が情けないアル! 子どもに譲るのが真の大人ヨ!」
「こんな時だけ子どもぶるなァァ!!」
三人は頭上でプリンの瓶を取り合う。
そうなると自然と一番背の高い銀時の手に瓶が収まる率が高くなる。
業を煮やした神楽は「ほぁちゃああああ!」と声を上げながら銀時の手を蹴り上げた。
「あ!」
空中に放り出されるプリン。
「え?」
それはすっぽりと山崎の手に収まった。
「でかした! 山崎!」
鋭い反応を示した○○は山崎の手から瓶を掻っさらうと、そのまま駆け去った。
そろそろアルバイト先に向かわなければ遅刻してしまう。
「アレ? ちょっと、○○さん!」
○○の背中を見送りながら、山崎は頬を引きつらせる。
「ん?」
背後からの殺気を感じて振り返ると、目を吊り上げた銀時と神楽が立っていた。
「ひっ! 旦那! いや、俺のせいじゃ……助けて、新八君!」
今にも襲いかからんとする二人の後ろに新八を見つけ、山崎は彼に救いを求める。