第44章 【第四十三訓】集え、バベルの勇者達!!の話
「桂ァァァ!!」
少し遅れて近藤がやって来た。
今この時、近藤の目は桂を捉えていない。
この機を逃す手はない。
「近藤さん、桂、こっちには来てませんよ!」
「○○!」
滑り落ちる近藤の手を○○は掴む。
「向こうに行きました! ボイラー室か、操舵室か、地下の方だと思います!!」
「そうか! よし、わかった!」
嘘の情報を吹き込まれた近藤はそれを信じて姿を消した。
近藤の姿が消えると、○○は柱から手を離した。
「○○さんんんん!」
滑り落ちる○○を見送りながら新八が悲鳴のような叫びを上げる。
○○は甲板の出入り口の柱に手をかけた。
「○○殿!」
そのすぐ横で、身を隠すように桂は潜んでいた。
○○の足の先では銀時が船の縁から身を乗り出している。
「ヅラ! アンタここから落ちても大丈夫でしょ!」
以前、逃走用として桂はパラシュートを用意していた。
今も同じような装備をしているならば、船から落ちても、いや、落とされても問題はないはず。
近藤が戻って来る前に桂をどうにかせねばならない。
自分のために。
「もちろんだ。何時如何なる時でも追っ手を巻くための準備は怠―――ぉぉぉ!?」
みなまで喋る前に、○○は柱を掴んでいた桂の手を引き剥がした。
落ちても大丈夫だろうと聞かれた時に突き落とされることを予見してもよさそうなものだが、桂は全く予期していなかった。
桂はうつ伏せに甲板を滑り落ちて行く。
だが、そこに予想外の出来事が起きた。
「なんか引っかかってる!!」
桂が甲板の途中で停止した。
目を凝らすと、パーカーの紐が甲板のささくれ部分に引っかかっているのが見える。
「なんでそんな服着てんのよ!!」
○○は柱から手を離し、桂の肩に蹴りをくれながら甲板を滑り落ちる。
少しの衝撃でパーカーの紐はささくれから取れ、○○と桂は並走して滑る。
桂は「さらばだ、○○殿。バイビー」と言いながら、空へと消えて行った。