第44章 【第四十三訓】集え、バベルの勇者達!!の話
屋形船『大和屋』に合コンのメンバーが揃った。
男女に別れ、テーブルを挟んで向かい合って座る。
向かい合うこと数分、全員だんまりを決め込んでいた。
「すまない。ちょっとうかがいたい事がある」
沈黙を打ち破るように一人の男が手を挙げた。
「俺は一体誰なんだ?」
その名は桂小太郎。
しかし彼は自分でその名を忘れていた。
どうやら先程、馬に蹴られた時に頭を打って記憶を喪失したようだ。
「え? 記憶喪失? 何言ってんの?」
○○は桂に目を向けた。
銀時が車に撥ねられ記憶を失った時と同様、○○は記憶喪失というフレーズに過敏に反応する。
記憶喪失キャラは自分の専売特許。真似は許し難し。
桂は○○に目を向けた。
「この者はおなごだったのか」
笠の下から聞こえた声に桂は驚く。
○○は虚無僧の天蓋を被り、完全に顔を隠している。
変装道具としてエリザベスが出したもの。
手には尺八が握られている。
桂の横で「実は俺もだ」と一人の男が名乗りを上げる。
○○が視線をズラすと、破いた革ジャンを羽織った近藤が目に入った。
「お前ら揃いも揃って記憶喪失だァ? それじゃ、私これ被ってる意味ないじゃない!」
○○は虚無僧笠を脱いだ。
桂と近藤の視線が○○に向くが、どちらも無反応。
男同士で記憶喪失談義を開始してしまった。
「○○、それ貸してヨ」
神楽から手を伸ばされ○○はそれを渡す。
視界の開けた○○は目の前の料理に手を伸ばした。
「神楽ちゃん、コレ美味しいよ」
天蓋を被っては脱いで遊んでいる神楽の前に○○は皿を置く。
テーブルの向こう側から、新八が光線を出しそうな目で○○を凝視していることには全く気がついていない。