第44章 【第四十三訓】集え、バベルの勇者達!!の話
「お前はもっと視野を広くしろォォ! テロリストだろーがァァ!!」
こんな場所で近藤と鉢合わせしようとは思っていないだろうが、それでも江戸の街中に身を置いている限り、いつ真選組の手が伸びてもおかしくはない。
危機意識が低すぎる。
それどころか、
「革ジャンおちましたよ」
「あ、すいません」
銀時に蹴られて落ちた近藤の革ジャンを、こともあろうに桂が手渡した。
近藤と桂の視線がかち合う。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
新八が声を上げる。
○○は家康像の裏のさらに奥、草むらへ身を隠した。
桂にまた「一緒に逃げてくれ」などと手を掴まれては堪らない。
以前は共にいる姿は見られなかったが、今度は近藤の目の前だ。
もういいから早いとこ追いかけっこ始めていなくなれと○○が投げやりになっている最中、突然、一頭の馬がつっこんで来た。
馬の前脚に蹴られ、近藤と桂が吹っ飛ばされる。
「すまない。遅れた」
馬の手綱を握っていたのは九兵衛だった。
甲冑に身を固め、頭上には三日月がついた兜が乗っている。
「妙ちゃんに「合こん」なるものは男と女の合戦だときいていたのでな。一応用心して来た」
「もう、九ちゃんったら」
合コン参加者の女性達を引きつれ、妙も姿を現した。
桂と近藤が目を覚ます気配がないため、○○は草むらから出て行った。
念のため家康像の横に隠れていたが、強烈な視線を感じて目を向けた。
「なんだエリザベスか」
エリザベスが向ける巨大な真ん丸の瞳。吸い込まれそうな瞳。
エリザベスはペタペタと歩み寄ると、○○の足元に転がっていた桂を抱え上げた。
今日の桂は変装しているわけではないが、普段と全く異なる格好をしている。
「変装?」
○○はあることを思いついた。
「ネェ、エリザベス。なんか変装道具持ってない?」
逃げの名手、桂小太郎。様々な逃走経路もさることながら、変装の名人とも言われている。
その桂と行動を共にしているエリザベスならば、非常時のために変装道具の一つや二つ、持っていてもおかしくはない。
エリザベスは裾をたくし上げ、両手を足元からつっこんだ。覗く足には脛毛がびっしりと生えている。