第42章 【第四十一訓】沖田姉弟と気にくわねェ野郎の話 其ノ一
「ったく、冗談に決まってんだろーが」
銀時は首をさすりながら歩く。
巴投げをかけられて壁に激突してから、首の調子が悪い。
「本気で投げやがって」
「だから、ごめんってば」
もう何度もネチネチネチネチと文句を言い続けられている。
本当に冗談だったのかは定かではないが蹴り投げたことは悪いと思っている。
投げた当人がビックリする程、綺麗な巴投げが決まった。
「あ、銀さん。ここだよ」
○○はレストランを指さす。
扉を開き、○○は店内を見回す。窓際の席に沖田は座っていた。
沖田もすぐに○○と銀時に気づき、手を上げて二人を呼んだ。
そこにいたのは沖田一人ではなかった。
手前に座っていた女性は立ち上がると、小さく会釈をした。
会釈を返しながら、この人はもしかしてと○○は思う。
沖田は立ち上がると、○○と銀時を席に座るように促した。
「姉上、紹介します。大親友の坂田銀時くんと、銀時くんの恋人で僕の友達の○○さんです」
『姉上』との言葉に、○○はやっぱりと得心がいく。
穏やかな雰囲気は異なるが、容姿は沖田とよく似ている。
「なんでだよ」
納得する○○の横で、銀時は後頭部を押さえて沖田の顔面をテーブルに叩きつけた。
銀時にとって真選組はただの腐れ縁。真選組側から見ても同様のはずだ。大親友などと紹介される謂れはない。
○○は表情を綻ばせて挨拶をした。
「お話はかねがね伺っていました。弟さんにはいつもお世話になっております」
毎月『激辛せんべい』を送ってくれる沖田の姉のことは近藤から聞いて知っている。
近藤や土方も沖田と同様武州の出身で、彼女とは旧知の仲だという。
「沖田ミツバと申します」
恭しくミツバは頭を垂れる。
「けーるぞ」
「え、ちょっと! 銀さん!」
まだ挨拶を交わしただけだというのに、銀時は○○の腕を掴んで立ち上がらせた。
「すいませーん、チョコレートパフェ三つお願いします」
「友達っていうか、俺としてはもう弟みたいな?」
パフェに釣られた銀時は、ちゃっかりと席に腰を戻した。
やれやれと思いつつ、○○も再び席につく。