第42章 【第四十一訓】沖田姉弟と気にくわねェ野郎の話 其ノ一
「銀さん、起きて!」
襖を開け放ち、○○は銀時を揺り起こす。
○○が万事屋を訪れて間もなく、銀時は起きて来た。
だが、厠から戻った銀時は頭がズキズキすると言って再び布団に潜ってしまった。
昨夜も深酒をしたらしい。
「せっかくバイトも休みなのに」
銀時は起きて来ない、神楽は遊びに出ている、新八は今日は来ない模様。
手持ち無沙汰となった○○が過去のジャンプを漁って読んでいた所に、沖田から電話がかかって来た。
「神楽ちゃんも新八君もいないのに、午前中ジャンプ読んでるだけで終わっちゃったじゃない」
○○は銀時の鼻を抓んだ。
「少しは構ってよ」
この男に甲斐性などを期待しても無駄なのはわかっているが、たまには文句も言いたくなる。
バイトがない時は万事屋に来いと言っていたのは銀時だというのに。
ふがっと言いながら銀時は目を覚ました。
「なんだァ、朝か?」
銀時はぼんやりとした目で○○を見上げる。
「何寝ぼけてんの。昼だよ、昼!」
銀時が上体を起こすと、○○はその顔を覗き込んだ。
「頭、もう大丈夫なの?」
寝起きで顔色は悪いが痛みを感じている風ではない。
「大丈夫みてーだな」
「じゃあ、起きて。ちょっと出か――」
沖田からすぐに来るようにと言われている。
立ち上がろうとした○○だったが、銀時に腕を引かれ布団の上に引き倒された。
「ちょっと銀さん。何してんの」
「構ってほしいつってただろ。新八も神楽もいねーなら、ここでいーじゃねーか」
「聞いてたの!? ていうか、そういう意味じゃないし!」
のしかかろうとする銀時を○○は両手で押し返す。
神楽がいつ帰るかわからないし、新八も絶対に来ないとは言い切れない。
そもそも万事屋へは普段から闖入者が多いため、二人以外にも突然、人が上がりこんで来ることも考えられる。
「たまにはスリル感じながらすんのもいーんじゃねーか?」
銀時はニヤニヤとした表情を見せる。
「いいわけ、あるかァァァ!!」
○○は銀時を蹴り投げた。
見事な巴投げが決まり、銀時は隣室の壁へと叩きつけられた。