第42章 【第四十一訓】沖田姉弟と気にくわねェ野郎の話 其ノ一
ジリリリンと電話の音が鳴り響く。
○○はジャンプをテーブルに置き、受話器を取った。
「はい。万事屋です」
――○○か?
電話の主は名乗らずに○○の名前を口にした。
「そうですけど……どちら様ですか」
○○の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
○○を知る人の中で、万事屋に電話をかけて来る人物などいるだろうか。
かつての依頼人だろうか。しかし名前を呼び捨てにされる覚えなどない。
――屯所出てまだそんなに経ってねーのに、もう俺の声も忘れたのか? 薄情な奴だぜ。
「え、総悟?」
そこまで聞けばさすがに名前を言われなくてもわかる。
真選組隊士の中で○○に連絡を寄越すのは山崎しかないため、全く頭に浮かんでいなかった。
――旦那いるか?
沖田が用事があるのは○○ではなく銀時らしい。
「いるけど」
○○は襖に目を向ける。
襖の向こうで銀時はまだ寝ているはずだ。
起こして電話に出させるとなると、数分を要することになるだろう。
電話の相手が沖田だと知った場合、出ない可能性もある。
ちょっと待ってほしいと伝えた所、沖田は代わる必要はないと言った。
――旦那連れて来てくれ。
レストランで待っているという用件を告げ、一方的に電話は切られた。
「何なの、一体」
○○は眉間に皺を寄せながら受話器を置いた。
沖田が電話をかけて来ること自体が変異だが、銀時に用事があるというのも奇怪な話だ。