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~月夜の紅~ 銀魂原作沿い小説

第41章 【第四十訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ五


「○○、花婿強奪して来い」
「は?」

 映画などでよく見るシーン。
 結婚式の最中、新郎と新婦が愛を誓おうとしたその瞬間、バーンと扉が開かれ男が現れる。手を差し出す男。駈け出す新婦。手に手と取って逃げ出す男女。呆然と立ち尽くす新郎。それをやれと言っている。
 映画では男が新婦を奪いに来ることが多いが、逆がないことはない。

「そんなこと言ったって、松平のとっつァん、私のこと知ってるよ」

 松平は○○のことを屯所に住み憑く地縛霊だと思っている。
 そんな女がこんな所に現れて近藤奪取に動いたら、屯所ではなく近藤に取り憑いた亡霊だったと誤解するかもしれない。近藤をあの世へとさらいにに来た亡霊に対し松平が銃を向けるようなことがあれば、○○は本当に成仏してしまう。

「その格好なら、とっつァんはわかりゃしねーだろ。普段の汚ねー○○しか見てねーからな」

 今日の○○は華美に着飾っている。格好負けしないよう、白粉もいつもより丁寧に、普段使っていない頬紅なども差している。たった二回しか顔を合わせたことのない松平は、屯所の幽霊と同一人物とは気づかないだろう。

「何だろ。総悟に汚いって言われるとものっそい腹立つんだけど」

 沖田の場合、本心から言っているように聞こえるからだろうか。
 沖田に対し沸々とした怒りを向ける○○の視界を、真っ黒い着物が遮った。

「銀さん?」

 銀時は○○に背を向け、沖田との間に割って入る。

「おーきたくん。うちの○○に汚ねェ役させないでくれるかなァ」

 演技でも、○○がゴリラの手を取って式場から逃走する姿など見たくない。

「とっとと便所行くぞ」

 沖田の背中を押し、銀時は会場を出て行った。

「旦那でも妬くことがあるんですねェ」

 珍しいものを見たと、沖田は面白そうな声を上げる。
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