第41章 【第四十訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ五
《 皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます
このたび私達は結婚式を挙げることとなりました
つきましては 日頃お世話になっております皆様に
感謝の気持ちを込めてささやかな小宴を催したいと存じます
ご多用中 誠に恐縮ではございますが
ご出席下さいますよう謹んでご案内申し上げます 》
『スナックお登勢』の店先で、数日前に届いた手紙を広げ、○○は頬を引きつらせている。
「銀さん、紐の位置ズレてますよ」
「面倒臭ェなァ。なんで俺がアイツの披露宴に出席しなきゃなんねーんだ」
「招待してくださったんですから、出席しないと申し訳ないじゃないですか」
上階から声が聞こえ、○○は手紙を手提げにしまった。
「招待してくださったって、お前……」
階段から下りた銀時は、店先に立つ○○の姿を見て言葉を呑む。
「わ、○○さん、綺麗です」
○○の姿を見た新八は表情を明るくした。
○○はお登勢に借りた中振袖に身を包んでいる。
黒と紫の絞り柄に小花が散りばめられた上品なデザイン。
若い頃のものだというから数十年経っているが、古さを感じない粋なものだ。
保存状態も良く、丁寧なお登勢の性格が垣間見える。
普段飾り気のない頭部には、鮮やかな赤の大きなコサージュがついている。
「華やかでお祝いの席にピッタリですね」
「お祝いの席って、新八君……」
祝いの席ではあるが、祝う気持ちは毛頭ない。
銀時と新八も正装の袴姿だ。
「銀さん、○○さん素敵ですね」
新八は隣に立つ銀時を見上げる。
銀時は眉間に皺を寄せている。
「わざわざ着てる人間の汚さが際立つような服着るこたァねーだろ」
「なんてこと言うんですか、銀さん。いくら照れ隠しでも」
「誰が照れてんだ!」
この長い付き合いで、銀時の本音がわからない新八ではない。
「○○、早くご馳走食べに行くアルヨ!」
○○の手を引き、神楽が走り出した。
「ご馳走ねェ……。何食べても美味しくなんて感じられないだろうけどなァ」
柳生との激闘から数日。妙と九兵衛の結婚は取りやめとなったが、もう一組、契りを結ばんとする二匹がいる。
これから向かう披露宴、新郎は近藤勲、新婦は猩猩星のバブルス王女だ。