第40章 【第三十九訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ四
「近藤さん! 総悟!」
○○は新八と妙の後を追い、通路を走った。だが、二人の姿を見つける前に建物を抜けてしまった。
どこかの部屋に入ったのか、それとも建物を出て逃げているのかわからない。
抜けた先に見えたのは、近藤と、近藤に支えられて歩く沖田の姿だった。
「○○! 無事だったんだな!」
無傷で走る○○を見て、近藤が安堵の声を上げる。
「近藤さんも無事だったんですね!」
「ああ。問題ない」
見た所、無傷のようだ。だがその実、尻を負傷していることは○○にはわからない。
一方の沖田の顔には血の跡が残っており、近藤の肩を借りないと歩けない状態のようだ。
皿は割られ、骨折させられたと新八に聞いてはいたが、この目で見るまで信じられなかった。
「総悟、大丈夫?」
○○は沖田の左腕を自身の肩に乗せた。
右側を近藤、左側を○○に支えられ、沖田は歩く。
「ざまァねーや。あんな奴に遅れをとるなんてな。ちと油断したぜ」
避けることなく軽々と脛に蹴りを入れられるなど、普段の沖田なら、させていないはず。
「総悟がここまでされるなんて……」
「この借りは必ずきっちり返すぜ」
○○は頷く。
○○は柳生の誰かのことだと思っているが、沖田が言っているのは神楽のことである。
「○○、新八君を知らないか」
近藤は新八の安否を尋ねる。
大将がやられているのなら、この勝負は既に終わってしまっている。
「さっきまで一緒にいたよ。お皿は無事。それから、お妙さんとも会えた。でも、今は――」
所在がわからないと言おうとした○○の耳に、当の新八の声が届いた。
「土方さん!!」
それは、今、出て来たばかりの建物の庭の方から聞こえて来た。
○○と近藤は顔を見合わせ、声の方へと足を進めた。