第40章 【第三十九訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ四
妙を捜し、○○と新八は走る。
広大な柳生家の敷地。一人の人物を捜し出すのは困難。
妙を見つける前に敵に見つかれば、一巻の終わりだ。
こっそりと妙を見つけなければならない。
しかし、捜している人物が騒ぎを起こしてくれている場合、レベルはぐんと下がる。
「待てェェェ!」
「そっちに行ったわ!」
○○と新八の耳に複数の女性の声が届く。
女中らしき人達が縁側を走る姿を目撃する。
それは決闘により引き起こされている騒ぎではない。
由緒正しきこの柳生家において、自分達以外に騒ぎを起こす人物がいるとすれば、ただ一人。
○○と新八は騒ぎが起こっている建物へと飛び込んだ。
「これ以上、好きにはさせないよ!!」
妙は女中達から逃げていた。
その前に背の低い男が立ちはだかる。
男の横っ面に新八は飛び蹴りを食らわせた。
「新ちゃん!!」
新八は妙の手首を掴んで走る。
「頼んだよ、新八君」
「○○さん!」
新八に手を引かれながら、妙は○○を見送る。
○○は二人に背を向け、追いかけて来る女中の足止めをする。
「まだ追って来るなら、容赦はしませんよ」
○○は木刀を女中達に向けた。
当主の命令よりも保身が大事。誰一人として妙を追う気配は見せない。
○○が一睨みすると、全員が逃げるように背を向けた。
「あ、ついでにその人が動けないように見張っといて下さいね」
新八に吹っ飛ばされた男を女中達は「輿矩様ァァ!!」と呼んでいた。
その名前は柳生家の現当主、九兵衛の父親の名前だ。