第39章 【第三十八訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ三
「遅いなァ」
しゃがみ込み、○○は周囲に生えた葉っぱを手当たり次第にむしっている。
足元に山積された緑が時間の経過を物語る。
草笛を作ったり、舟を作ったりと遊んでいたが、次第に飽きて来た。かといって、早く出ろとは言えない。
腹の調子など本人の意思でどうにか出来るものではない。
沖田と別れ、二人で柳生の大将を捜し始めた銀時と○○だったが、通りかかった厠へ銀時が寄って行くと言ったために待つことになった。
待てど暮らせど、銀時は戻って来ない。
このままでは、何もしないうちに勝負がついてしまうのではないか。
こうして手持ち無沙汰に草を引っこ抜いている間にも、各所で戦いが繰り広げられているに違いない。
果たして大将の新八は無事だろうか。
「先に行っちゃおうかな……」
○○は厠へと目を向ける。
しかし個人行動は避けたいし、待ちきれないくらい長かったと思わせたくもない。
どうしたものかと考える○○の耳に、ガサガサと草木が揺れる音が届いた。
敵の襲来だろうか。ならば、留まっているわけにはいかない。この場から離脱する絶好の機会。
「銀さん! 敵の気配がしたから先に行くよ!」
○○は厠へ向かって走り、声をかけた。
「後で合流しよう! 今の道を直進だからね! 迷子にならないでよ!」
「ちょっ、待っ……ぐっ」
銀時の返事も聞かぬまま、○○は草木の生い茂る繁みへと走る。
残された銀時は腹を押さえつつ、どうにも出来ずにいた。
○○一人で突撃させるような真似はさせたくない。だが、まだまだ厠から出られそうにもない。