第38章 【第三十七訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ二
木刀を手にし、○○は柳生家へと向かう。
やがて、高台に広大な屋敷が見えて来た。
門へと続く長い石段の下に、笠を被った二人の侍らしき姿が見えた。
門番だろうかと、○○は木刀を握る手に力を込める。だが、彼等は石段を見上げている。
家を守るためではなく、○○らと同じく乗り込まんとする様にも見える。
三人の気配に気づき、背の高い方の男が笠を持ち上げた。隣の男も同じように笠を上げる。
見えた二人の顔はよく知る顔だった。
「え、トシ? 総悟も」
石段の下にいたのは土方と沖田だった。
「○○?」
土方は眉をひそめた。
「なんでテメェらがここにいる」
○○、それから銀時を睨むように土方は目を向ける。
「そっちこそ、どうしてこんな所に来てんのよ」
「なんだァ。わざわざ敵地にまであの女取り返しに来たのか? 言っとくが、あの女を取り返してもゴリラんとこに行くわけじゃねーぞ」
「そんなんじゃねェ」
土方はタバコを取り出し、火をつけた。
「借りがあんだよ。柳生のガキに」
九兵衛が武者修行を終えて妙に会いに来た際、土方はその場に居合わせていた。
妙を取り囲んでいた真選組隊士を九兵衛は一太刀で倒し、土方は刀にヒビを入れられた。
「シティー剣法が何だってんだ。剣の道は生きるか死ぬかだろ。華麗な技なんざ必要ねェ」
土方は石段に足をかけ、ゆっくりと昇っていく。
その背を追うように沖田、○○も石段を上る。
「総悟はなんで来たの?」
○○は隣を行く沖田に声をかける。
土方は九兵衛に借りがあるとして、沖田はどんな理由でこんな所にまで足を運んだというのだろう。
自分自身が手合わせして負けたならともかく、土方や隊士がやられても何とも思っていないだろう。
「俺には俺の護りてーモンがあんのさ」
普段見せることの少ない真剣な表情を沖田は見せた。