第37章 【第三十六訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ一
「よーし、よーし、これ食べな」
神楽はゴリラの体によじ登り、何かを口に放り込んだ。
「ちょっと、何勝手に食べさしてんの!!」
「豆パンの豆アル」
それは神楽がこの三日間食べさせられ続けたパンからほじくり出された豆だった。
「お前、王女に何食わしてんの!!」
「王女って何よ?」
「えっ? いや、あの、オージョって名前なんだよ!」
無理矢理食べさせられた豆をオージョが吐き出すと、食べ物を粗末にするなと銀時は平手打ちを食らわせた。
「ちょっと、銀さん! 暴力はダメだよ! 動物虐待!」
躾のためでも、手を上げることはいただけない。
○○は頭上を見上げて銀時を非難した。
銀時はオージョの右肩に乗っている。神楽は左の肩の上だ。
「散歩の途中だからもう行く……」
オージョの手を引き、近藤は逃げるように歩き出した。
だが、
「ウンコアル」
近藤の袴の裾から、茶色い物体が転がり出たのを三人は目撃。
近藤はそれをオージョに責任転嫁。蹴りを食らったオージョは、池へと頭からつっこんだ。
「近藤さん……」
○○は冷たい目を近藤に向ける。
「ちょっ、○○まで俺を疑ってんの? 冗談よしてよ~」
自分ではないことを近藤は訴える。
だが、銀時も○○も神楽もしっかりとその目で見ていた。何を言っても無駄。
自分の失態への弁明に必死な近藤はオージョのことを忘れていた。