第37章 【第三十六訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ一
「ちょっと! なんとかして下さい、近藤さん!」
「元はといえば、お前らが! 頭に瓦食らわしたり、豆食わしたりしたから怒ってんだろ!」
「何言ってんですか! 近藤さんが池にブチ込んだから怒ってるんでしょ!」
○○と近藤は横並びに走って逃げている。
池から這い上がって来たオージョは怒って四人に襲いかかった。
二人の視線の先には、同じく逃げる銀時と神楽の背中が見えている。
「どうにかして下さい!」
「いててて! 器用だな、○○!」
○○は全速力で走りながらも、近藤にパンチを食らわせる。
「ん? アイツら、戻って来るぞ!」
近藤の声に、○○は視線を前へと戻した。
銀時と神楽がこちらに向かって全速力で駆けて来る。
どうやら行き止まりだったらしい。
「ちょっ、袋のネズミ!?」
前は行き止まり、後ろはオージョ。
「近藤さん!」
近藤は進行方向を変えると、建物の方へと一目散に走った。
戻って来た銀時と神楽はその背中を追う。○○もその背中を追った。
「テメェ、おとりになれ!」
銀時は近藤の襟首を掴む。
しかし近藤は負けない。
引かれる力を物ともせず、我先にと逃げる。
「ぐぇぶ!!」
襖をぶち破り、近藤は部屋へと飛び込んだ。その後を追って銀時と神楽、さらには○○も飛び込む。
近藤を最下に、銀時、神楽、○○と四人は折り重なるように畳の上へと突っ伏した。
「わああ! 来てる、来てる!!」
一番上の○○は、すぐに上体を振り返らせて背後を見た。
地響きを上げ、オージョが怒りの形相で追いかけて来る。
「オイぃぃ、お前! アレなんとかしろよ、お前のペットなんだろ!!」
「違う!! 実はアレ、王女!!」
そう言っている間にも、オージョはもう目の前。
「ヤバイって、これ!」
○○が声を上げるのと時を同じくして、近藤も声を上げた。
「アレ!? お妙さん!」
振り返ると、目の前に妙が立っていた。
妙は左目に眼帯をつけた見知らぬ少年と共にいた。
「……みんな。さようなら」
目に涙を浮かべ、妙は別れの言葉を告げた。