第37章 【第三十六訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ一
「オイオイ、何やってんだ、お前。こんな所で」
銀時、○○、神楽は屋根から降りて近藤の元へと足を運んだ。
「近藤さん、お久しぶりです」
○○は近藤に挨拶をした。
屯所を出て以来、隊士と顔を合わせるのは初めてだ。○○は少し戸惑う。
近藤にだけは桂と友人関係にあることを打ち明けて屯所を出ようとも思ったが、結局言い出せなかった。
「あ、○○、ひ、久しぶりだなァ」
近藤は頬を引きつらせながら言葉を返した。
「近藤さん? どうかしました?」
「え、な、何が? どうもしてないけど?」
近藤は慌てた様子で手を動かしている。
○○は近藤の横で頭を押さえているゴリラを見上げた。
頭のてっぺんには大きなコブがある。銀時が落下させた瓦で出来たものだ。
「なんですか、このゴリラ」
ゴリラなのに着物を着ている。
大きさも動物園で見るゴリラの三倍は大きい。
「女にモテないからって、ついにゴリラと交際スタートアルか」
「何言ってんの、神楽ちゃん」
「いいすぎだぞ、神楽」
ゴリラを恋人扱いする神楽を、○○と銀時はたしなめる。
近藤はゴリラを指さし、これはペットだと伝えた。
「○○が出て行って、みんな寂しがってるしなァ。何か癒しになるものをと思って……」
「屯所で飼ってるんですか!?」
「あ、ああ。番犬……番ゴリラ? にもなるだろ」
○○はゴリラを見上げる。
確かに塀の向こうにこの姿を見れば、攘夷浪士も襲撃をためらうかもしれない。