第37章 【第三十六訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ一
「絶対ェだな」
「はいはい。約束したから。武士に二言はないって」
「お前、武士じゃねーだろ。武士じゃねーから、そんな約束、反故にするとか言い出すんじゃねーだろうな」
「言うわけないでしょ! どれだけ信頼されてないのよ!」
トンカラカンと神楽がトンカチを鳴らす横、銀時は○○に詰め寄っていた。
一人だけ菓子を堪能したことをネチネチとしつこい銀時に、○○は折れた。
帰りにパフェをおごることで一応の決着を見た。
「三日続けて三食豆パンって……」
先程、昼ご飯だと言って取り出されたものを食べながら、神楽が泣いていた。
金欠のため、安売りで買いだめした豆パンしかこの三日間、口にしていないという。
銀時のためではなく、神楽が可哀相になっての提案。
「そうと決まれば、さっさと終わらせて帰るぞ」
銀時は○○の横に積まれていた瓦を一枚掴み、端へと移動した。
給料日前なので懐は痛いが、自分だけ美味しい思いをしたことに罪悪感がないわけではない。
「あ」
銀時の後ろ姿を見ていた○○は、その手から瓦がすっぽ抜けるのを目にして声を上げた。
寸分も経たぬうちに、
「ギャアッ!」
という悲鳴と、瓦の割れる音がした。
銀時と神楽は屋根から身を乗り出す。
「スイマセン。手ェすべっちゃって」
「ゴリラが二匹」
○○も二人の横に並び、屋根から見下ろした。
「え、近藤さん?」
庭にいたのは袴姿の近藤と、和服を着た大きなゴリラ。
瓦の直撃を受けたゴリラは気を失って倒れていた。