第36章 【第三十五訓】ホストクラブ『高天原』の話 其ノ二
「そこはホラ、『オッケェイ、我が命にかえても』」
「もういいですよ、それ!」
「『Just Do It !! 』」
「それももういいです!」
ヤケに綺麗な発音の○○の掛け声を合図に、新八はクレーンを動かした。
鉄筋が布を突き破る。
「このオバはんはもらったぜ! フゥ~」
神楽は勝男達の手からおばちゃんを奪取。
「オッケェ! 神楽ちゃん! こっちに投――げ!」
振り子のように戻る鉄筋の下で手を伸ばしていた○○は、おばちゃんにしがみついた人物を見て声を上げる。
「黒駒!」
おばちゃんの足に勝男がしがみついていた。
あれでは落としてもらうことは出来ない。
「あのヤロ!」
鉄筋で破壊されたコンクリートの欠片を手に取り、○○は勝男に向かって投げつける。
「オラァ! 離しやがれ! ワレェェ!!」
「いででで! なんじゃ、ワレボケェェ!!」
脇腹や側頭部に鉱物が直撃するも、勝男は手を離さなかった。
「しぶとい!」
○○は片手に収まる欠片ではなく、ブロック大のコンクリートを両手で持ち上げた。
投げつけるには少々しんどい。
「そいつァムリだ、○○。あとは任せろ」
「銀さん!」
銀時は二階部分の鉄筋の上に立っていた。
○○はコンクリートを頭上に持ち上げたまま、勝男の腹部に木刀を叩きつける様を見届ける。